強力なエンジンには加速力が求められる。しかしどれだけ優れたエンジンでも重ければ速度が出ない。非力でも軽ければ速度は出る。
加速度 = 力 ÷ 質量 (F=ma)
速度と力の関係は、人間の直感が教えるとおり、力が大きいほど大きい。よって力を与えれば早くなると考えるのが普通である(空気摩擦は考慮しない)。
ニュートンは力を速度ではなく加速度で考えた。加速するためには力が必要である。逆に加速しなくてよいのなら力は必要ない。所で車でもアクセスを緩めれば速度は低下するし、ゴルフボールだって次第に速度は低下するのである。
このとき、速度が低下する以上、加速度は負の値になるはずである。それは何かが抵抗を与えているから、つまり逆向きの力を与えているからである。速度とは加速度の演算の結果に過ぎない。加速度を積分すれば速度が求まる。速度を積分すれば距離が求まる。
加速度が求まるとき、地上では常に重力の影響を受けている。重力と呼ばれる項を独立させてしまえば、地球の上で起きていることも、月で起きていることも、太陽で起きていることも同じ様に考えられる。という発見は、ゴルフを考える上ではあまり重要ではない。
しかし重要でない事はその影響を受けない事ではない。重力が誰にとっても公平であるから無視できるだけであって、その中でも上手に重力を使っている人と逆らっている人では結果は大きく異なるだろう。我々は知らず知らずのうちに重力を含めてモノを考える。だからそれに逆らっている事もある。スイングは、トップの位置エネルギ-と加速度だけで構成されている。
宇宙船とは違いゴルフスイングは極めて短時間の間に最大スピードに達すべきである。必要なのは瞬発力である。もし力を与え続けることでスイングスピードをアップしようとしているのならば、それは間違えたアプローチな気がする。
ゴルフスイングはロケットよりもパチンコで考える方が近いのではないか。小さなゴムよりも、大きなゴムの方がどんぐりを遠くまで飛ばせる。人間が弓を引くよりも、機械で捲くクロスボウの方がより重いものを遠くまで飛ばせるのである。
クロスボウや空気銃の仕事量は60J程度であるが、拳銃は200Jである。火薬と空気の膨張の威力は別格である。畏るべし粉塵爆発、水蒸気爆発。しかし、これらの爆発は小さい爆発が連鎖することによって莫大な力を生じるものであるから、一過性の運動であるゴルフスイングの参考にはなるまい(体中の小さな筋肉が次々と連鎖するイメージもないではないが、それを意識した運動とするのは困難と思う)。
蒸気爆発に関する研究
我々が研究すべき物理学は、弓のそれだ。
より遠くに飛ばしたいと考えるならば、長く力を与えようと考えるのは間違いではないか。もちろん、物理学は長く力を与える方が飛ばせることを教えている。しかし、それが成立する為には、時間内の力が全て加速に使われなければならない。
1+1+1 = 3 であるが、1+1-1 = 1 である。
力には正負があり、力が常に正の足し算になるとは限らない。ある時には無駄に消費され、ある時にはブレーキとなる。
力を長く与えるほど加速すると考えるのは、長い距離と同じである。時間と距離は交換可能な関係にある。石ノ上にも三年と言うが、雨粒も千年、万年と石を穿てば穴を開けるし、強い力で押し出せば瞬時に石を切るのである。
スイングは、左から右へとクラブヘッドが移動する。加速できる距離を長くするためにトップの位置を少しでも後ろにしようとする。クラブは単に後ろに引くのではなく斜め後ろに引く。斜め方向に回転する事で、より距離を延ばせるからである。
後ろに引いたものは、遂に停止する。それはスタンスが後ろに動かないからである。他の競技のように加速するために後ろに下がることもなければ、円盤投げのように同じ場所でクルクル回転することもない。恐らくそうした所でゴルフの飛距離は伸びないと思う。
ゴルフクラブはトップからあっという間に秒速40m以上に加速し、ボールに当たり、体の中心を追い抜き左側に移動する。このとても短い時間で加速から停止まで完了する。
弓矢はある瞬間から弓弦の動きを超えて飛び立ってゆく。その時、矢が弓弦から離れなければ飛ぶことはできない。ここがとても重要で、矢はスムーズに弓弦から離れなければならない。
弓弦がもとに戻ろうとする力が矢に伝えられる。矢の速度が十分に遅いときは、弦の元に戻る力が伝わるが、次第に矢は弦の速度を超える。超えれば矢は弦から離れて飛んでゆく。
弦は指から離れた最初が一番強い。そこからは弱くなる一方であろう。もちろん微細に見れば、停止した状態から加速し、どこかで最大値に達し、また弱くなり停止する。その最大値になる点は手を離した近辺にあるだろう。
ゴルフスイングもそう考える。最初に力のマックスがあり、あとは弱くなる一方と考える。そういう力の与え方を模索する。
最も有効なのは、スイングの改造よりも筋力の鍛錬である。トレーニングして筋力を上げればそれだけで飛距離は向上する。構造の改革よりも、部位の強靭化である。
慣性の法則が示す通り、止まったものを動かし始めるのが最も大変である。ゴルフスイングではここで重力を使う。クラブを高く持ち上げ位置エネルギーを与えているのはその為でもある。それからゆっくりと動き始めたクラブに一瞬で筋力を発揮しパワーを与える。
この加速する場所はどこか?
長く加速することを考えるよりも、どこで一気に爆発すべきか、その場所を探すべきではないか。
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