2020年5月10日日曜日

練習場より 2020.05.10号 - 腹腔と脊柱

人間の姿勢は体の器官を覆うように出来ている。最も重要な脳は、頑丈な頭蓋骨と三つの膜、髄膜を持っている。硬膜、クモ膜、軟膜は単に脳を保護するだけではなく血管の道線を構成している。この構造は姿勢によって変わるようなものではない。肺や心臓も肋骨で覆われており、姿勢の影響を受けないように保護されている。

姿勢に強く影響するのは腹腔である。逆に言えば姿勢は腹腔の空間を良い状態に保つ必要がある。と考えるのが良さそうである。もちろん、進化の結果として、筋肉や骨格がある。それらが合目的性を目指して進化するはずがなく、多様な進化でよりよいものが残ったと考える方が妥当だろう。

姿勢によって腹腔が影響を受けるなら、腹腔にも良い形状があるはずである。そしてある程度の負荷に耐えられる構造を持っているはずである。哺乳類だけが腹腔を持つ。爬虫類は最後まで肋骨で保護している。この違いが、哺乳類の敏捷性と関係すると考えるのも妥当だろう。

腹腔を正しい容積と形状に保つためには背骨が重要で、体幹は背中側の筋肉と腹側の筋肉で形作る。更に、左右の筋肉のバランスも必要になる。体の中にも目には見えないが筋肉が通っている。背骨は内臓と背骨の間にある筋肉が形状を維持する。全ての筋肉が繋がってひとつのバランスを取る。

人間の体のバランスはどこで認識するか、三半規管は、重力に対する位置関係を捕らえる。しかし、それは姿勢ではなく体勢を整える動的なセンサーであろう。そしてこれが唯一のバランスを取る部分ではない。静的な姿勢に対しては、背骨も機能する。つまり、背骨は何本もの椎骨が繋がるから、それぞれの繋がり方、前後、左右方向のずれの積算として上下方向を全て総和すれば、三次元の姿勢を意識する事ができる。これを意識する事で、背骨のバランスが理解できる。この違いは三半規管では捕らえられない。

つまり姿勢を把握するセンサーは体中の彼方此方にあるはずで、三半規管や背骨だけではないはすである。我々は自分が思っているよりもこの体躯を使いこなしていない事は前提としてあって良いように思う。

背骨の湾曲をもっと正しい(正しいとは唯一の解という意味ではなく、その時の状況に合致し、最も負担が少なくなるような)形状を意識する、それに併せるように肩などの配置も決定されてゆく。脊柱指向の姿勢をベースにする。この姿勢への意識がスイングに影響しないはずがない。

(2019.02.27起草、2020.05.10脱稿)