2016年2月11日木曜日

練習場より 2016.02.11号 - 右足の太もも

腕を振り回すとき、適切な弧がある。距離が長すぎでも短すぎてもよい回転は得られない。個体差があるので体格や筋力によって異なるだろうから、軽く振りながら適切な位置を模索するしかない。

それが自分の理想とする円周よりも小さくなったとしても、それは受け入れるしかない。ある意味でスポーツとは己の理想が物理的制約によって屈服させられるものだと定義付けても良い。

基本的にスポーツは負けているのである。テレコキネシスで何かを動かせるわけでもない、岩石を破壊するだけの筋力もない、例え壊せたとして、それに耐えられるだけのカルシウムの結合など存在しない。

航空機は、3次元の空間で三つの方向に回転しようとする。それぞれをローリング、ヨーイング、ピッチングと呼ぶが、進行方向にX軸を引けば、ローリングとはX軸(進行方向)、ヨーイングとはY軸(上下方向)、ピッチングとはZ軸(左右方向)への回転である。

もちろんゴルフではこんな回転は起きないが、長い棒状の物には自然と回転しようとする力が生じる。それはシャフトのトルクもそうだし、スイングも回転である。

思えば何もかもが回転しようとしているらしい。量子からしてスピンするし、ボールも回転しながら飛ぶし、地球も自転しながら公転する。力が加わったとき、重心のわずかなズレが回転運動をするのだろうか。だとすれば、ゴルフクラブが回転しようとするのは自然の理である。

回転により、ある空間内で最大の力を得ようとするのがスイングの目的であるが、最初の構成要素が自分の体である。身長1mの人が3mの弧を描こうとしても無理があるように、最適値にある方が、そこから外れるよりもパフォーマンスは良い。

ただ問題となるのが人間はどれが最適解かを知りえない事である。それが最高のパフォーマンスなのか、それとも、もっと良い解があるのか。それを誰も知りえないのである。アルファゴが人間には思いもよらぬ手を打った様に、世界のトッププロでさえ、考えていない手がある。今の自分の考えている手が最上という証拠などどこにもない。

いずれにしろ、ひざを痛めていたので、これまでは片足だけでスイングしていたようなものである。片足軸に近かった。

それはケガした足を更に悪化させたくなかったからであって、それには合理的な理由があった。しかし、右足をスイングに参加させる方がよさそうである。

ではどうするか。少しだけ参加させることにした。スイングの時に、意識して右足の太ももに力を入れるようにしてみた。単に筋肉を収縮させるだけで、何かを踏んだり蹴ったりする必要はない。

それでも劇的に変わるのである。ただ力を入れるだけで、体全体の何かを変える。

筋肉が緊張すれば、体を固定する働きが生まれる。それは外部に対して力を与えなくとも、体の中に支柱を建てるような効果があるようだ。

打つ時に、体幹を支える左右の動きが両足によって固定される。従来、それを片足だけで支えようとしていたのに両足を参加させたようなものだ。

それがスイングの安定をもたらすのみならず、力をボールに伝えやすくするようだ。これらの効果をもたらす体の安定性は両側の太ももの筋肉を使うことで実現できるようだ。

そうすると、足に障害を持っている人は、この働きができないという事になる。体を安定させるのは必要なことだから、両方の太ももを使うのとは別の方法を探し出す必要がある。ゴルフは健常者だけのものではないから、こうして色々な発見があるのは楽しい。

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