2018年4月29日日曜日

練習場より 2018.04.29号 - 背骨と肩と胸骨

脊椎動物の発生は、外胚葉の表面に脊索が形成される。魚類では背骨は体の中央にあるが、陸上に進出する時、生物は重たい内容物を背骨にぶら下げるように配置した。重たいものを下から支えるよりも、ぶら下げておく方が、エネルギー効率がよいからと思う。

四つ足では問題なかったその配置だが、二足になった時、この構造物には重要な欠点が検出された。ぶら下げておくべき内容物も垂直にしなければならないので、ぶら下げておくわけにはいかなくなったのである。何か他のもので支える必要がある。そのために選ばれたのが骨盤であって、骨盤は下にあって、それより下に落ちないように配置された。

こうすることで、骨盤から背骨を上に伸ばすことができるようになった。人間の体の構造は畢竟、オタマに手足を付けたものである。全体を支える背骨が重心の真ん中を通っていない点では、ゴルフクラブともよく似た力学的配置である。

重力に逆らうように進化するのには、それなりの工夫が必要である。重力から脱出するのに、サターンロケットがどれほどの酸素を燃焼させなければならなかったか。人間の場合、これを筋肉とバランスで実現している。

直立する時、最も大きな重量物は頭であるが、併せて腕も重い重量物である。頭部はまだ背骨の直下にあるが、両腕は背骨から離れた場所に配置されている。そのため、これを支えるのに肋骨の上に乗せるように配置し、肩甲骨と鎖骨で遠隔にある両腕の操作を実現した。

骨盤が内蔵を落ちないように下から支えているのとは逆に、両腕は肋骨の上からぶら下げるようになっている。これが肩こりの原因に繋がる。

両腕を支えるために、肩甲骨と鎖骨のふたつの骨が必要とされ、これらの骨によって、腕を体の中心と結びつけている。最終的に、筋肉は背骨という中心と繋げて置かなければ、強く動けないのである。

鎖骨の根元の自由度が下がると肩や背中の動きを制限する。鎖骨と肋骨の位置関係が呼吸、特に吸い込みに影響する。手の先から鎖骨までが腕。支点、力点、作用点となって、これが複雑に絡む。作用点が次の支点になるような連続して力の伝達を行う。胸骨と鎖骨の間をストレッチし緩ます事で自由度を取り戻す事ができる。

これがゴルフスイングに影響しないはずがない。

2018年4月22日日曜日

練習場より 2018.04.22号 - 鎖骨と肩

肩を動かすのは肩である、という思い込みは間違いであると気がついた。

構造的には、もちろん肩は、肩関節に固定されている。だからといって、それを動かすのが肩と考えるのは短絡なようだ。

人体の構造は、ご存知の通り、内骨格系の生物の宿命として骨を筋肉で結びつける。本川達雄の「ウニはすごい バッタもすごい」によれば、筋肉は収縮する方向でしか力を発揮できない。よって縮めるのが力であって、伸ばす力はない。伸ばす動きの場合は、反対側で収縮が起きているはずである。

ウニはすごい バッタもすごい - デザインの生物学(2017/2/19) - 本川 達雄 - 中公新書


意識は反対側を縮めるとは理解していないだろう。そのような考えでは意識には馴染まない。伸ばすという意識を縮めるに変換する機構がどこかにある。

コリとはこの筋肉が緩やかに長時間収縮した状態が続いた結果であろう。そのための疲労がコリである、と思われる。単純に考えるならば、縮んでいるのなら、反対側を伸ばせば伸びるではないか、と考えられる。だがそう簡単ではないようだ。

収縮は神経が支配している。これを物理的に伸ばしても、収縮信号が停止するとは限らない。伸ばしても収縮信号が流れ続けているならば、疲労が解決することにはならない。これは筋肉の問題ではなく、脳から神経へと発する電気信号の問題なのだ。

一般的にマッサージには、筋肉をほぐすと同時に、この信号を遮断する効果がある。一時的にも信号が止まれば筋肉は疲労を回復させることができるわけだ。ただし根本の原因が取り除かれなければ、再び信号は発生するだろう。またしばらくしたらコリが辛くなる。

肩を動かすには、肩と結ばれている筋肉が収縮しなければならない。人間の体はあちこちが結びついているから、類似する動作をするのにも複数の経路がある。だから、どの筋肉を主力として使いますかという話になる。

肩回りの骨に注目するならば、鎖骨と肩甲骨は外せない。これらが背骨を結びついて肩を動かす。これらのどれをどの程度参加させていますか。それによってコリ方も違ってくる。

肩とは鎖骨の先についた支点である。力点は鎖骨の胸骨側にある、という感じ。つまり、肩は鎖骨で動かす、と考える。

人体の多くはテコを利用している。だから鎖骨と肩の位置関係も直線上にはない。軸線を変えてゴルフクラブのようなトルク(回転、捩じる力)を生み出す構造がある。回転しやすくする事で関節が動かしやすくなる。

胸骨側から鎖骨を通して肩を通って腕を動かす。肩は肩関節で固定されているが、これを鎖骨を使って動かす。車のシフトノブのようなイメージだ。

胸骨側に力点があり、肩が支点となって、作用点となる腕を動かす第1種てこ。

このように意識し、鎖骨を動かすようにすることで、背中の痛みがかなり軽減できた。そして、この動きがゴルフスイングに影響しないはずがないのである。

スイングは立ち姿の姿勢を見るだけで明らかである、という理想に基づいて考えてゆきたい。

2018年4月1日日曜日

練習場より 2018.04.01号 - ロボットと首

付属を主力にするようではよい結果は得られない。本体を中心に組み立てるべきなのである。

ゴルフならば本体とは背骨である。それ以外のパーツは付属品である。人間のような体の構造をしていても、不要物を取り除けば、蛇と同じになるのである。

では蛇の首とはどこからどこまでか。学術的には、首の7つの骨の部分とするのだが、ここでは違う定義を使用する。首とは、舌の終わりから、胃の入口まで。つまり首とは食道の範囲である。我々が首と呼んでいる部分は、喉である。

食道を首とするなら、首の骨の数は7つではなく、C1-C7 から T1-T8 辺りまでである。



首を頸椎だけと考えるのではなく、もっと広く捉える。頭を支えるためには、7本の骨と周辺の筋肉だけでは足りない。もっと動員すべきなのである。

なぜこのような誤解が起きるかと推察すれば、ロボットアニメの影響が大きいと思われる。マジンガーZ はロボットの革新であったが、体の構造に対する誤った理解を刷り込んだ。

アトム、鉄人、ロボット三等兵などは、頭、首、胴の三節で構成されているが、マジンガーZ 以降、頭、首、胸、腹、腰の5節が主流となった。

このロボットの構造は、人間が外骨格生物である場合の仮想であるから、その創成には甲冑や昆虫が参考にされた。特に関節の在り方や組み合わせ方は節足動物に由来する。

その後の革新として、エヴァンゲリオンがある。体節数が増加し、首の装甲が特殊化した。胸部は小さくなり、腹部は更に3つに分節した。これはムカデなどの多足類が参考にされたものと思われる。

鉄人が甲冑をモデルとして草摺やスカートを取っ払った形状であるのに対して、マジンガーはより肉体的、生命的な形状に変わっている。デザインは次第に筋肉を鉄鋼化する方向に進んでいるように思われる。

しかし、それは外から見た形であって、筋肉の付き方をデザインしたものではない。フォルムを中心にしたデザインである。そうではなくて、我々には解剖学に基づいたデザインが求められているのである。

これは、自分の体について考える場合にも重要である。筋肉がどのようについているか、を理解することは容易い。だが、それがどのように動くか、互いにどのように連動するかを理解するのは至難である。

だから実際に動かしてみないと何も分からない。その場合に、背骨を中心に動かすという事を意識する。動きの本体は背骨にある。肩甲骨も腕も付属品なのである。

人間の体を構造的に語るならば、まず内蔵部分がある。これは骨盤が下支えして、全体を筋肉で包む。脊椎は骨盤から延びるが、先端に頭骨を付けるためである。よって、頭骨から内臓部までが構造的には首である。

だから首には次の付属品が着いていると考えるべきなのだ。頭骨の下に喉があり発声を司る。その下に潤滑系が配置されている。肺と心臓は休みなく動き続ける重要器官なので肋骨で保護している。背中側に肩甲骨を配置し、そこに腕、肩などの筋肉を取り付けている。

解剖学的に見れば、内骨格と外骨格の関節は異なる。外骨格系は関節の中に様々なものを通すが、内骨格系では、筋肉は関節の周囲を通してゆく。