2016年11月13日日曜日

練習場より 2016.11.13号 - 部分の正常性が全体に及ぼす影響

回転する物体にも力が掛かっている(角運動)。その力は基本的にふたつの直線の力に分けて考える事ができる。そのひとつは回転する方向にかかる直線の力である。一般的に力がかかった物体は直線に動く。

回転する運動から直線に移行する運動には、例えば手から離れたり、クランクが切断された時の運動がある。回転中に手から離すことを利用したスポーツのひとつがハンマー投げである。

この原理はゴルフスイングでも同様であって、クラブヘッドはまっすぐ動こうとするが、腕がそれを引き留めている。だから円状の軌道を通る事ができる。

よってゴルフスイングのパワーロスの殆どは、円運動をさせるために発生していると言っても過言ではなく、要はゴルフクラブが飛んでいかないようにする力がパワーロスの原因と言える。

グリップもそうであるし、左腕の使い方もそうだ。右腕の畳み方も、上体の開き方も同様である。

複雑な動きがあると様々な要因でパワーロスが起きる。どれが原因となっているかを正しく見極める事は重要である。なぜなら、原因を間違えると、対処法も間違えるからである。

直さなくて良い所を修正すると、その影響が広く及ぶ。元々の原因が取り除かれていないので、パワーロスは取り除かれていない。すると、その修正は何の影響もしないか、またはもっと悪くなるかのいずれかだろう。

仮に悪い原因を正しく取り除いたとしても、それが多数ある原因のひとつに過ぎないならば、必ずしも良くなるとは限らない。取り除いたために、別の場所に新しい原因が発生するかも知れない。もっと悪くなる可能性さえある(全体のバランスが更に崩れるため)。

逆に、それを取り除くためには、悪い箇所ではなく、全く関係ない場所に手を入れるべきなのかも知れない。それによって全体が良くなる可能性もあるわけである。複雑すぎてなんとも言えないのである。

音波に音波を重ねると音を消すことができるが、重ね方次第では増幅する。スイングのどこが間違っているかを語るのは難しい。微小な関係が複雑に入り組んでいて人間業とは思えない。

だから、とりあえず次の方法論を採用するのである。

例えば、左腕の動作だけは完璧であると仮定する。その上で次の対応を考えてゆく。幻想の階段をひとつだけ設置する。その上に本物の階段を構築してゆくようなものだ。

もちろん、左腕の動きが完全に正しいはずがない。それでも左腕には不具合がない、そこは間違っていないと仮定すると話を先に進める事ができる。

トップしたり、ダフったりとしても、左腕は原因ではない。とすると、何が原因であるか。上体の角度か?膝の動きか?というように推測してゆく。

クラブと左腕の進む方向は一致すべきか?それとも角度を持っているべきなのか?左腕が動くときの右腕の位置はどうすればよいか?

そうやって、ある特定の場所は完璧であると仮定するならば、スイングを形作るものが色々と変えてゆけるだろうと思うのである。

もちろん、明らかに左腕が間違ているという場合もある。それも常にチェックしておかなければならない。逆に言えば、左腕の動きが完璧でなければ、他を意識しても仕方がないとも言えるわけである。

つまり、左腕の動きが完璧であるとは、左腕だけでも完璧に動かそうとする意識と言ってもよい。

一か所だけでも(グリップであれ、左腕であれ、右腕であれ、右足であれ、左肩であれ、背中であれ)完全に近いというレベルにまで高めることが出来れば、それに引っ張られるように全体も正しくなると、信じてもよい。

なぜなら、全体が密接に関係している以上、ある一箇所の動作が完璧に正しいならば、全体も正しくなっているからである。もし一箇所にでも正しくない動作があるのなら、どこひとつとして完全にはなっていないのである。全てがつながって全てが影響し合っているならばそうなるであろう。

箱の中にある気体の分子がひとつ動いたのなら、その箱の中の全部の分子がその影響を受けて動くはずだからである。ただ影響が大きいか小さいか、その影響がすぐに消えるか、ずっと長く続くかだけの違いである。

これは次のような式にしてもよいだろう。

A1+A2+B1+B2+...+Z1+Z2 = 0

合計が 0 の時がスイングは理想的な状態にある。

すべての要素(A1,A2,...Z1.Z2)が 0 である時、これは完全な理想形である。だが、合計を 0 にするのに全てを 0 にする必要はない。A1 が 10 であっても B1 が -10 なら打ち消し合って 0 になる。これでも理想的なスイングは得られるわけである。

もし A1 と A2 が独立した値ならば、お互いは影響しない。ひとつひとつの要素を 0 にしてゆくしかない。

全ての要素が関係しているとは、A2 = A1 + 2 のように式をひとつの要素に置き換える事ができる場合である。こうすれば一箇所(ひとつの要素)を 0 にするだけで結果を 0 にすることができる。

これはすべて仮説(hypothesis)である。

0 件のコメント:

コメントを投稿