色々な試行錯誤の末に辿り着いた、自然なスイングが出来たと思う時、はて、これをどう表現すれば良いのだろうか、これ以上の分析はもう不可能な気がする、という場所に辿りついたりするものである。
それをもう一度、少しずつ分解してみて(運動を微分してみて)、それは一体どういう運動の組み合わせなんだろうか追及してみる。もちろんそれが完全な解明とはならない。完全など不可能だと思うのだけれど、それでも、このこれとあれをきれいに連動すればうまくいくという感覚が見つかるものである。
当然だが、その他の部分が前提条件である。それらが想定通りの連動してくれていなければ成立しない。例えば、和建築の土台に西洋建築を建てようとするのは無謀であろう。建てたければ意識化しておかなければならない。それはギリシア建築であろうと、近代建築であろうと同様だろう。
前提条件とは意識されていないものも含めて土台である。古典芸能を鑑賞する時、基本的な知識が要求されるのと似ている。昔はそれを教養と呼んだ。現代のように知識の流動性が激しい時代には、古典芸能に求められる知識のプライオリティは低い。それがハードルの高さとなる。囲碁というゲームも同様であろう。時間をかけて身に付ける時間が今や乏しい。
この前提条件を全て記述(意識化)するのはまず不可能であろう。だからコツというものは、全ての人に対して、すべての状況に於いて有効とは言えない。となると、各人が積み重ねてきた歴史が入りやすさに対してとても重要な意味を持ってくる。
五輪の書、風之巻 第8
一 他流にはやき事を用る事。
兵法のはやきと云う所、実の道にあらず。
はやきといふ事ハ、
物毎のひやうしの間にあはざるによつて、
はやき遅きと云こゝろ也。
其道上手になりてハ、
はやく見ヘざるもの也。
たとへバ、人にはや道と云て、
一日に四十五十里行者も有。
是も、朝より晩迄、はやくはしるにてハなし。
道のふかんなるものハ、
一日走様なれども、はかゆかざるもの也。
乱舞の道に、上手(の*)うたふ謡に、
下手のつけてうたへバ、おくるゝこゝろ有て、
いそがしきもの也。
又、鼓太鼓に老松をうつに、静なる位なれども、
下手ハ、これもおくれ、さきだつこゝろ也。
高砂ハ、きうなる位なれども、
はやきといふ事、悪し。
はやきハこける、と云て、間にあはず。
勿論、おそきも悪し。
これ、上手のする事ハ、緩々と見ヘて、
間のぬけざる所也。
諸事しつけたるものゝする事ハ、
いそがしくみヘざるもの也。
此たとへをもつて、道の利をしるべし。(1)
殊に兵法の道におゐて、はやきと云事悪し。
是も、其子細は、所によりて、
沼ふけなどにてハ、身足ともにはやく行がたし。
太刀ハ、いよ/\はやくきる事悪し。
はやくきらんとすれバ、扇小刀の様にハあらで、
ちやくときれバ、少もきれざるもの也。
能々分別すべし。
大分の兵法にしても、はやく急ぐ心わるし。
枕を押ゆると云心にてハ、
すこしもおそき事ハなき事也。
又、人のむざとはやき事などにハ、
そむくと云て、静になり、
人につかざる所、肝要也。
此こゝろ、工夫鍛錬有べき事也。
訳
ゴルフでスイング速度を貴ぶのは、勘違いである。
速さとは物毎の一瞬のタイミングという刹那にあって、早い遅いとはこのタイミングの事である。
メジャーを取るような人のスイングは早いようには見えないものである。
例えば、ウッズという人がいるが、彼の飛距離は290も300ヤードも飛ぶ。
だが彼も朝から晩までひたすら早く振っているわけではない。
ここが分かっていないと、トップからフィニッシュまでひたすら早く振りまわせばいいと思うが、それでは上手く行かないのである。
カラオケで、上手な人の歌と一緒に歌うと、未熟な人は歌に合わせようとするから、遅れまいとして忙しく感じるのである。
また、バラードは静かに感じるけれど、未熟であると、これも遅れまいとして、先に先に行こうとする。
ロックは、急な歌だけれども、早いというのは悪いこととされている。
「早きはこける」と言われているとおり、逆に拍子に間に合わないのである。
勿論、遅いのもダメである。
これ、上手な人は、ゆっくりとしているように見えて、タイミングはドンピシャである。
どんな事でも上手な人のする事は、忙しいようには見えない。
この例えを以って、早さについてよく考えなければいけない。
殊にゴルフの道においては、振り急ぐは悪し。
これが様々な場所場所に顔を出してくる。
遠くに飛ばそうとすれば、身足ともに早く行こうとする。
ドライバーを、いよいよ早く振ろうとする。
早く振ろうとすれば、ウェッジ、パターの様にはいかず、ちゃくと振れば、少しも飛ばないものである。
ここのところ、能々分別すべし。
ゴルフにおいて、早く急ぐ心は良くない。「枕を押す」と呼ばれる心とは、後の先みたいなもので、それからでも少しも遅くはないのである。ただ、これはゴルフには関係ない。どちらかと言えば敵ではなく自分の枕を押すべきであろう。
同じ組の人がぶん回して上手く行った時などは、「背く」という教えの通り、それを超えようなどとは思わず、静かにして、相手に合わせないようにすることが肝要である。
この心は工夫鍛錬できるものである。
さて今のところの総決算である。次の要素に重要と思ったので記述しておく。
- 上半身の前傾姿勢は崩さない
- スイングの時は右脇腹が動く
スイングと右脇腹のどちらが先に動くかは分からない。少なくともこのふたつは連動して動くようである、それを見つけたと思う。
右脇腹は、上半身の回転ではない。しかし、その場所に留まっているというものでもない。トップを作るときに必要だった場所から退避する感じである。
それが自然と上半身の動きをスムーズにするように感じられる。それは回転ではなく、ロックを外すという感じである。左側に回転しようとしているなら、右脇腹の動きは間違えている。少なくとも、体の左半分は回転しようとしてはいない。
兎に角、これまでで一番良い感じが出来た。ようやくスタートラインに立てたと思う。
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