浮舟といえば源氏物語の一遍であるが、ゴルフでは、芝の上での浮揚感である。
練習場では上手くいっているスイングをコース上では再現できない。何かが違う。練習場で上手くいくあの感じが得られない。
何故だろうと考えてきた。何に着目すれば打開できるか、問題が漠然としたままである。違和感が払拭できないのに、手詰まりである。そんな状況が続いた。総当たり式に試してみるしかない、どれくらいあるのだろう。
そんな中で気付いたのが芝生の柔らかさである。
練習場は少しはフカフカマットにしてあるが、その下にあるのはコンクリートであって必ず水平である。沈み込みの恐怖はないし、地球を押し込む力に十分な反力が得られる。
しかし、コースは芝であり、その下にあるのは土である。柔らかな地面で、フェアウェイでさえ完全な水平ではない。
最初の着眼は、反力の利用だった。反力が変わるなら、スイングにも影響する。期待した大きさが得られなければ、スイングも変わる。
練習場ではマットが敷いてあるとは言え、その下には堅いコンクリートがある。だから少し踏み込めば強い反力が返ってくる。そういう環境で練習を続けていると、自然とこの反力を期待したスイングが身に付いてしまう。
そしてコースに出ると違和感を感じる。期待する反力が得られないのだからバランスが崩れる。得られない力を想定するスイングがちぐはぐになるのは自然だ。
この反力の違いがどのような構造上の違いを生じさせるのかは知らない。得られない反力を期待しない代わりに、その変わりをどこかで得ているはずである。安定しない理由は理解できても、その先にある、何をどう意識すれば、意識をどう変えれば、明確な違いがフィードバックできるかは考えるだけでは分からなかった。
そう、練習場をコースのつもりでスタンスを取ってみるまでは。
練習場で、地面からの反力が低い前提で打ってみる。確かにしっくりと来ない。
足をもっと開いては、とても魅惑的な言葉であるが、これは反力が大きい事を前提としている。また、人は立脚の安定性を高めるために足幅を広くする。無意識的に。特に水平でない場合は。
これは新しい発見であった。スタンスの幅を決めるのは通常はクラブ選択である。よりパワーを発揮するクラブほどスタンスの足幅は広くする。これは大きい砲台ほど基礎も強くするのと同じ理屈だ。
直進安定性を高めるためランボルギーニのホイールベースは長く取られる。回転性能を高めたければ逆にするという。ボクスターは短い。ミズスマシがくるくる回るのは体型が円に近いからだし、トンボのしっぽが長いから高速飛行ができる。零戦が運動性能を確保するために翼面荷重を小さく設計した。それは紙がひらひらと空から落ちてくるようなもので、そのヒラヒラを自在に操作できるように操縦桿を付けた。
一方で F-104 は如何にも翼面荷重が高い。重さの割に翼面積が小さいから単位面積あたりが担う重量は大きい。さすがは最後の有人戦闘機と言われるカッコよさである。所がその戦闘機よりも現代の大型ジェット旅客機の翼面荷重は大きい。航空技術の進歩は日々止まらないのである。
さて、高い出力を要求するほど幅が広がるのは、レオポルド(28cm列車砲、全長30m)とドーラ(80cm列車砲、全長48m)を比べても納得できる。
安定性の悪さが自然と足幅を広げるのだとすれば、その影響を考慮しなければならないはずである。同じアイアンを持っても、練習場とコースでは上半身が同じでも下半身のスタンスは1クラブ程度は変えるべきという話になる。スプーンを持ちながら、下半身がドライバーの構えであったら、恐らくどこかで無理が生じ破綻する。
よって、対処法としては、それを考慮した練習を予めしておくこと、コースでは足幅を確認する事。安定性を重視してスタンスを取った場合、それは練習場とは違ったフォームになっている可能性が高い。
コースでは練習場よりも足幅を大きくしやすい。練習場では力いっぱいスイングできるので自然と足幅が大きくなりやすい。これを別に言うなら、練習場では少し足幅を狭めるべきだし、コースでも足幅は気持ち狭くする方がいいはずだ。
練習場で気を付けるのはバランス。スタンスでは重心を動かさないこと。
ちょうど、水に浮かべた舟に乗ったつもりでスイングする。これがちょうどいい例えになっている。スイングで強くは踏み込まない。なぜなら舟が引っくり返らないことを第一とすべきだからである。飛距離も加速度も力加減も優先度は二次的にする。
そのうえで最高のパフォーマンスを得るにはどうすればよいか、という別論もあり、ひとつには、腕はボールにヒットするまでに真っすぐに戻すべきというのがある。
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