その日は葬式だった。僕は長く椅子に座っていた。居心地が悪い。もぞもぞと動いたり体を揺らしたりしながら体勢を整える。そして不意に気付いた。
肩甲骨を背中に立てるようにすれば体が楽になる。長く座っても苦痛にならないと。これはゴルフのスイングにも影響を与えるだろうと直感した。
「体の前」が正面の事か、ゴルフのような横向きスポーツでの進行方向である左側を指すのか、と同様に「立てる」も紛らわしい言い方である。上の方向であるのか、体に対して垂直であるのか。もう少し説明を要する。
「肩甲骨を背中に立てる。」
- 肩甲骨の下側を背骨側に引く。
- 座った状態で肩甲骨の下側を背中の筋肉に載せるようにする。
- 肩甲骨の下側を背中の筋肉と背骨の間に入れ込むようにする。
人間は骨盤から背骨が伸びている。背骨から肋骨が伸び、背中側には肩甲骨が配置されている。肩甲骨は肩から靭帯でぶら下がっている。関節ではないので動く自由度が高い。肩からぶら下がっていると見るか、背中の筋肉の上に載せているかで感じが違う。
- 肩
- 肩甲骨
- 肋骨
- 腹
- 腰
- 骨盤
胸を張るとか、背中をまっすぐに伸ばすと言う。これを言葉通りにしようとすれば、胸を張るは背中の筋肉を縮める動きであるし、背中を真っ直ぐにするのは背骨を伸ばす動きに思える。でもこれは正しくないと思う。背中の筋肉でどうこうするものではない。
能の立ち姿は、胸をはり、お尻を出し、膝を曲げるという形をとる。これは肩甲骨を背中の上に立てている形だろうと勝手に思っている。
ボクシングではガードのために両腕を前に出す。すると猫背のような形になりやすい。猫背は肩甲骨の上側が背中とくっつき、下側が浮いた状態だと思う。肩甲骨が背中に対して斜めである。
腕は魚の鰭から進化した。もともとお腹側の側面にあったものを体の両側に移動したのが腕の進化である。四足歩行の馬の足は前後に動く。体の側面に肩甲骨があり、肩甲骨に胴体をぶら下げている。鳥は細長い肩甲骨で羽の上下の動きを支えている。
肩甲骨は魚類にもある由緒正しい古い骨である。それが多くの生物で多様な進化をしてきた。それだけ腕を動かすのに重要な役割を果たしてきたのだ。ということは使い方は様々で重要であるので、使い方が下手であっても十分にその機能を果たすように進化してきたはずだ。もっと上手な使い方をすれば高い潜在能力を引き出せる可能性が高い。
肩甲骨には肩を動かす筋肉が繋がっている。筋肉は必ずふたつの場所と繋がる。その繋がる場所は骨と決まっている。つまり骨と骨を繋ぐものが筋肉である。筋肉が運動の力を生み出す。それを支えるのが骨であるなら、自由度の高い肩甲骨の存在は、スイングに与える影響も高いに違いない。
この考えの正しさは保証できない。またこの先で全く違うことを書くかも知れない。しかし、これに気付けたのは普段とは違う場所へ行ったからであり、普段とは異なる経験をしたからであり、その体験での気づきなのでここに書いておきたい。
@seealso
肩甲骨~‘つなぎ’の骨~(その1)- Olivia's Room
日本理科美術協会 -2014.2.1『細長い肩甲骨・・・鳥とモグラの前足の話』松本晶