2016年4月12日火曜日

練習場より 2016.04.12号 - クレーンの原理

人間の(動物、植物、単細胞生物でも同様だが)体の使い方は効率を追求したような所があって、それを生物の進化と呼んでも差し支えあるまい。進化とは効率の追求である、とも言えよう。

多くのスポーツが前傾姿勢を構えの基本として取るが、これも効率の追求の結果と考えるのが妥当である。だから前傾姿勢とは言えども重心が下半身の支えから大きく外れているわけではないのである。

重心がバランスを決めるので、動きという点で重心の取り方は重要である。例えば、重心の移動によって体は動く。その時、重心の移動する方向とは反対方向へ急に方向転換できるものではない。ニュートンの力の法則を無視できないからである。

慣性の法則(第1法則)
力が作用しない限り、静止または等速直線運動する。

ニュートンの運動方程式(第2法則)
加速度は、力に比例し、質量に反比例する。

作用・反作用の法則(第3法則)
作用する力には大きさが等しく逆向きの反作用の力が働く。


運動をスピードに着目すれば +100km から 0km そして -100km というような運動をすることは想像上では自在である。しかし UFO のような未知なるテクノロジーならいざ知らず、現在の我々の物理学ではそれを無視するかのような動きをすることは不可能と言える。

つまり、急激な方向転換をしたい場合も、それは物理学に則て行うという事であって、それは詰まる所、回転運動を含まざるを得ず、いかに回転と直線の組み合わせで動きを構築するかという話が結論である。

これは激しいスポーツにおける基本的な考えであって、ゴルフとは余り関係ない。ゴルフでは咄嗟に体勢を変えたり移動するような動きはほとんど不要だからである。

だが、ゴルフのスタンスも、上半身は前傾姿勢である。これを支えるのは腹筋であり、ボールと下半身の間に重心を置くのが良い。

つまり、体の重心は、下半身から外れているため、それを腹筋で支える必要がある。その姿勢をずっと取っていればあっと言う間に腹筋が疲労して辛くなるのが当然である。

このように、自分の前にある空間を体で抱え込むようにスタンスするだけではなく、スイングの間も、その体勢は崩してはならない。これがスイングの肝要と思う。

前には常に倒れこむような重心の取り方をしたまま、右から左へクラブの移動が行われる。これを支えるのは腹筋のみであって、ここで楽をしようと、重心を後ろに下げたり、最初から、重心を下半身から外さないでいるのは、恐らくスイングにとっては、得策ではないと思われる。

なぜ重心をずらすのが良いかと言えば、足は地面に接地している。その真上に重心がなく、地面と重心がズレている事で、例えばテコ的な、例えば角運動量のような、何らかの力学的意味が加わると思われるのだが、それが何であるかを説明できる所には至っていない。

それでも重心をズラせばそれを支えるための緊張が体幹で必要となり、緊張した筋肉群をひとつの大きな棒状の塊と見做せるようになる。当然ながらそれらは一切動かないわけではなく、細かな運動の連続であり、その細かな動きが、おそらく梃子のような力(力を強化するが移動距離は短くなる、またはその逆)をクラブの運動に与えているのではないだろうか。

重心をずらす事のメリットには、更に、腕の軌道が良くなる事が挙げられる。抱え込んだ空間を通る時、腕はかなり自由に動くことができる。それはクレーンが支柱の真上ではなく、必ず斜めの腕が伸びているその先に付いているのと似ている。そうすることで腕は比較的、肩に邪魔されずに動けるのである。

それによって生じた自由な軌道空間でスイング中の腕が邪魔されないという事は抵抗が少ないという事である。抵抗が少なければ、それだけスイングの力は減衰しないはずである。

といく方向で今週末はゴルフに行く。